0-4
…キスされた。
誰に?
村田に。
何で?
…わからない。
村田の部屋で、一緒に勉強をしていて。
突然…
キス、された。
そんなこんなで俺が困惑していると、村田は俯いて。
「…ごめん。」
ごめん?
違う、そんな言葉が聞きたい訳じゃない。
なぁ、教えてくれよ。
「なんで?」
ゆっくりと顔を上げた村田の顔は、辛そうだった。
「好き、なんだ。」
絞り出すような声だった。
スキ?
スキ…
スキって…
…好き?
村田が?
誰を?
「好きなんだ、君が。」
俺を?
本気?
初めて見る顔だけど、これはきっと、嘘ではない。
演技ではない。
なんとなく、そんな気がする。
…じゃあ、俺は?
「俺は…」
村田のことをどう思っている?
好き?
……
………
わからない…
「俺、は…」
好きって、どんな感じなのだろう?
…わからない。
知らぬ間に、視線は床にいっていた。
「、僕を見て。」
びっくりして。
最近では家族以外に名前で呼ばれたことなんて全然なくて。
だから、反射的に顔を上げていた。
そうしたら、村田の手が俺の頬を包み込んだ。
「僕に触れられるのは、嫌?」
…そういえば、嫌じゃない。
他の奴なら嫌だったのに。
「じゃぁ、さっきのキスは?」
それも、嫌じゃない。
…あれ?
「他の人にやられても?」
それは、嫌だ。
他に親しい人なんていないけど、例えいたとしてもそいつとは…嫌だと思うはずだ。
キスって普通、友人同士ではやらないし、やりたくもないものだよな?
…それって。
「特別。」
そうだ、村田は、特別。
その、特別の中で…
「俺がお前に抱いているものは、恋愛感情なのだろうか?」
そう問うたら、柔らかく微笑まれて。
「きっと。」
そうだといい。
幸せに感じている自分がいるから。
同じように、村田も幸せだといい。
「キス、してもいいかな?」
頷いて。
先程よりも長く触れていた唇が離れたら、お互いを抱き締めた。
全身から村田の想いが伝わってくる気がして。
負けずに村田を想って。
今までで一番、幸せだ。
そうか。
「これが、好きって事なんだな。」
「うん。」
好き。
好きだ。
どうしようもなく、
ただ、君だけを。