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「…予備校?」
「えぇ。」
「どうして?」

どうしてわざわざ、予備校なんかに通わそうとしているんだろう。
俺なら別に自主学習だけで高校くらい合格できると思うんだけど。

「念には念を、よ。
 確かに学校での成績は良いかもしれないけど、井の中の蛙って言葉もあるじゃない?
 入って損はないでしょう。」


…つまり、俺を信用してないって訳だ。
俺の実力を知ろうともしないで…

「拒否権はないわよ。」



溜息ひとつ。





***





予備校に通うようになって、いつの間にか2週間程経っていた。

「ねぇ。」

帰る準備をしていると、声をかけられた。

…俺、だよな。
すぐ前に人立っているし、そこから声がしたし。

顔を上げてそいつを見てみると、案の定知らない奴だった。

「僕、村田 健って言うんだ。君は?」

何だ、こいつ。

「…… 。」

かぁ〜良い名前だね。よろしく!」

そう言って右手を差し出された。

「………。」

「あれ?ほら握手握手。」

俺はよろしくするつもりなんかなかった。
だからそれに応じなかったら、向こうから無理矢理やらされた。

人の意志を無視して慣れ慣れしくするものだから、癪に障ったんだ。

「お前、何がしたい訳?」

そう言うときょとんとした顔をされて、次には微笑まれた。

「仲良くしたいんだ、君とは。」

…なんで俺なんだ。
人なんて他にも大勢いるだろう。

「俺はそのつもりは微塵ともない。他を当たってくれ。」

鞄を持ってさっさとその場を後にする。
これ以上関わり合うのはごめんだ。

「あ、ちょっと待ってよ!」

「なんで付いてくる。」

「一緒に帰ろう?」

「断る。」

「付いていくから。」

…なんなんだ、本当に。

こうなったら走るか。
即断即決だ。

「え?あ、ちょっと!!」




…案外簡単に撒けたようだな。
なんて少しホッとしていたが、明日からのことなど知る由もなかった。


そして、


「あ〜ぁ。逃げられちゃったなぁ〜」


「…でも、今度からは絶対に逃がさないからね。」

なんて、村田が怪しく呟いていたことも、知らない。



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